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悲惨な子ども虐待事件が無くならないのは親の大半が愛着障害だからだ

根拠なき世界への信頼を育むことと生きる場所は他にもあると伝えること

■親の少なくとも3分の1は親の機能が果たせない

 問題は、自分の生育環境の悪影響により、特に愛着障害のせいで親として機能できないかもしれないと自己省察できない類の人間が、安易に親になることだ。

 岡田尊司は『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』(光文社、2011)において、人間が幸福な人生を創ることができるかどうかは、人格形成の土台である人生の早い時期に信頼できる養育者を得ることによって安定した愛着を獲得できるかどうかにかかっていると言う。

「愛着」とは、自分の人生や、他者を含む世界への根拠なき信頼である。この信頼は、自意識のできる前の段階において、自分が養育者によって受容され求められる(=可愛がられる)経験を日々いっぱい味わい蓄積することによって育まれる。

 暴行などの物理的虐待であれ、心理的虐待であれ、ネグレクトであれ、養育者の言動によって、自分の人生や世界への無自覚なる根拠なき信頼(=愛着)を持つことができなかった人間は、他者や世界に対して不安や恐怖を持ちやすい。これが「愛着障害」だ。

 愛着障害者は、自己防衛が過ぎて攻撃的になったり、不必要に過剰に利己的になったり、自分でも言語化できない混乱に翻弄されたり、人間関係の結び方や他人への距離の取り方が下手だったりする。

 岡田によると、成人の3分の1は、「愛着障害」である。その成人の3分の1を占める愛着障害者の親もまた愛着障害者である。自分の愛着障害を意識化言語化できないままに親になった親は、自分の子どもに根拠なき生への確信を植え付けることができない。虐待が世代的連鎖しやすいように、その結果の愛着障害も世代的に連鎖しやすい。

 つまり、もう私たちは認めるしかない。成人の3分の1が愛着障害者であるのならば、親になった人間の3分の1は親として機能できない可能性が高いと。では、どうするか。

 

■子どもに世界への信頼感を与えることは社会的コスト削減になる

 生まれてくる子どもの少なくとも3分の1は、愛着障害の原因となるような虐待を受け、生き延びて大人になっても、その後遺症は生涯にわたり続く。彼らや彼女たちは、まともな社会人として自立が難しく、社会にとって負担となるかもしれない。

 この少子化の時代に子どもは貴重だ。子どもの3分の1が長じても社会を支えることができなくなるとしたら、なんという社会的損失だろうか。

 親として機能できない親を批判してもしかたない。親として機能できない親の代わりに、根拠なき生への確信を子どもに与えることができるシステムが必要だ。

 まずは、児童養護施設にもっと予算を割き、職員や里親に研修機会をより一層に提供することにより、愛情を込めて児童を養育することができる人材を確保することだ。親に代わって、子どもの心に自己や世界への根拠なき信頼を根付かせることは、大きく見て社会のためになる。

 日本国には、日本の子どもの3分の1を棄民して構わないほどの実質的人口はない。高齢者施設で余生を過ごす高齢者は、どれだけ数多くいても、実質的には人口のうちに入らない。これは老人差別ではない。事実だ。

 言うまでもなく、社会主義国やイスラエルのキブツの例が示すように、児童養護施設のような集団的養育の場は、家庭や家族の完全な代替物にはならない。みんなのお母さんは、私のお母さんではない。しかし、虐待する親より児童養護施設のほうがはるかにはるかに安全だ。

 親と暮らさなくても、あなたは生きていける。親と暮らさなくても、あなたは幸福になれる。親が馬鹿でも、あなたとは関係ない。大人なら誰でも、子どもたちに機会があれば、基礎知識として何度も何度も伝えよう。

 

 ただし、児童養護施設の職員や里親による児童への虐待は起こりうる。アメリカのボーイスカウト連盟は、少年に対する性的虐待で訴えられ、その賠償金で破産した。カトリックの神父の信者の児童への性的虐待をバチカンの教皇が謝罪した。学校の教師による盗撮や性的虐待の事件は、もはや珍しくもなんともない。そういうことをする人間は、どこにでも棲息する。彼らにも人権はあるので完璧に完全に駆除できないのが残念だ。

 この事実も子どもに何度も伝えよう。そのような実例に遭遇したら、どう行動するべきか訓練しておくべきだ。お花畑ではない世界について子どもに知らせるのは、非常に辛いことではあるが。

 

 現状では18歳になると児童養護施設から退所するのが決まりだ。20歳まで入所していていい場合もあるが。希望者にはせめて大学を卒業するまでは所属可能にし、返済免除の奨学金を給付すべきだ。

 そんなことになったら、子の養育の責任を果たさず、他人の金(税金)で済まそうと思う不埒な親が出てくる?確かに。しかし、どんな社会でも、クズは存在する。この世の常として、それもしかたない。

 ともかく、親の3分の1は親になる能力がないと認めよう。親はなくとも子は育つシステムを作ろう。子どもに無償でなにがしかを与えよう。そのことによって、親が与えることができなかった、この世界への根拠なき信頼を彼らや彼女たちが心の奥にゆっくりじっくり育むことができる助けとなることをしよう。それが、ひいては私たちの社会を守ることになる。

KEYWORDS:

馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。
著者/藤森かよこ

 

死ぬ瞬間に、あなたが自分の人生を
肯定できるかどうかが問題だ!

学校では絶対に教えてくれなかった!
元祖リバータリアンである
アイン・ランド研究の第一人者が放つ
本音の「女のサバイバル術」

ジェーン・スーさんが警告コメント!!

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これは警告文です。本作はハイコンテクストで、読み手には相当のリテラシーが求められます。自信のない方は、ここで回れ右を。「馬鹿」は197回、「ブス」は154回、「貧乏」は129回出てきます。打たれ弱い人も回れ右。書かれているのは絶対の真実ではなく、著者の信条です。区別がつかない人も回れ右。世界がどう見えたら頑張れるかを、藤森さんがとことん考えた末の、愛にあふれたサバイバル術。自己憐憫に唾棄したい人向け。  
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あなたは「彼ら」に関係なく幸福でいることだ。権力も地位もカネも何もないのに、幸福でいるってことだ。平気で堂々と、幸福でいるってことだ。世界を、人々を、社会を、「彼ら」を無駄に無意味に恐れず、憎まず、そんなのどーでもいいと思うような晴れ晴れとした人生を生きることだ。「彼ら」が繰り出す現象を眺めつつ、その現象の奥にある真実について考えつつ、その現象に浸食されない自分を創り生き切ることだ。
中年になったあなたは、それぐらいの責任感を社会に持とう。もう、大人なんだから。 社会があれしてくれない、これしてくれない、他人が自分の都合よく動かないとギャア ギャア騒ぐのは、いくら馬鹿なあなたでも三七歳までだ。(本文中より抜粋)

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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  • 藤森 かよこ
  • 2019.11.27